繭
「気がつかれたのですね。」若い娘の声がした。(ここは・・・わしは矢を射られ斬りつけられて・・・・)後の記憶は無かった。目を開けると、ぼんやりと煤けて黒ずんだ太い梁が映った。上体を起こそうとすると肩に激痛が走った。「いけません。まだ傷が癒えていません。」娘は男を制した。
「すまんが、どうも思い出せん。どうしてここに。」「爺が運んで来たのですよ。」娘が微笑むと頬に笑窪が生じた。
後ろで束ねた長い髪が揺れた。「大平城の合戦で倒れていた、あなたを爺が荷車に乗せてきたのです。」そう言いながら茶碗を差し出した。
「薬草を煎じた物です。楽になりますよ。」
親は流行の病で娘が幼い時に亡くなった。それで爺に育てられたのだと。体を横たえながら男は娘の身の上話を聞いた。
「夢を見ていた・・・合戦の夢・・斬って・・斬られて屍だらけの・・・そんな夢だ。」男は独り言のように呟いた。
娘は眉をしかめた。「どうして戦などするのでしょうね。」
戦に明け暮れた生活に疑問を挟む余地など無かった。(どうして・・か。)男は自問した。もとより納得のいく答えなど出せるはずもなかった。
薬の効き目が現れたのか、いつしか男は眠りに落ちていった。
柔らかな感触と甘い匂いがした。薄く目を開くと娘の体が横にあった。(じっとしていて・・・)呟くと娘は男の体を、そっと抱きしめた。冷えた体に娘の温もりは心地良かった。繭につつまれた幼虫が成虫へと変化していくように男の中で何かが変わっていった。
※わたし(つよぽん)の先祖は南北朝時代の南朝方に従って関西から来たと言われています。古文書に「曳馬川の芝刈りとなる。」とあるのです。つまり定住したのですね。ラブ・ロマンスがあったかどうかは^^:つよぽんの妄想ですから^^